迷路のような「バチカン美術館(ヴァチカン美術館)」の見どころを逃さず、効率的に見学するための館内マップや見学コースなどの情報をどこよりも詳しく解説します。
最大の見どころシスティーナ礼拝堂など、バチカン美術館は20以上の美術館から構成されます。見学コースの全長が7kmにもおよび、内部の構造も複雑です。そのため、美術館の構造、見学コースを理解しておかないとシスティーナ礼拝堂になかなかたどり着けない、ということも起きかねません。
そこで本記事では、バチカン美術館館内の構造をできるだけ分かりやすくご紹介し、見どころを見逃さない見学コースを詳しくご紹介します。
なお、バチカン美術館は世界でトップ5に入る入場者の多い美術館です。最近は、事前に時間指定のチケットを予約しておかないと数時間待つこともざらです。
バチカン美術館のチケット予約の攻略法を以下の記事で詳しく解説しているので、まだチケットを予約していない方は参考にしてください。
目次
- 1 バチカン美術館 見学の攻略法
- 2 バチカン美術館の見学コース・マップ
- 3 バチカン美術館へのアクセス・入場の仕方
- 4 エリア(1) 1階ピーニャの中庭周辺 (エジプト博物館、キアラモンティ美術館、新回廊)
- 5 エリア(2) ④ピオ・クレメンティーノ美術館: Museo Pio Clementino
- 6 エリア(3) 2階通路 (⑤エトルリア博物館~ピウス5世の居室)
- 7 エリア(4) ⑩ラファエロの間: Stanze di Raffaello
- 8 エリア(5) 南側1、2階(ウルパヌス8世の礼拝堂、⑪ボルジアの間)
- 9 エリア(6) システィーナ礼拝堂: Cappella Sistina
- 10 エリア(7) バチカン図書館
- 11 エリア(8) 絵画館: Pinacoteca
バチカン美術館 見学の攻略法
バチカン美術館を見学する上で、事前にしっておくべきポイントをご紹介します。
攻略法1:バチカン美術館のマップ
バチカン美術館は巨大なので事前に各美術館の位置関係、見学ルートを把握しておくことをオススメします。
バチカン美術館のチケットを予約すると、電子チケットのPDFに以下のマップが付属しています。ですが、このマップだけに頼ろうとすると迷いやすいです。
このマップは見学ルート、分岐ポイント、一方通行、などを確認するには、非常に便利で参考にすべき情報です。しかし、模式化されているので各美術館の具体的な位置関係、大きさ、1階なのか?2階なのか?、がわかりにくいという欠点があります。
そこでオススメなのが、バチカン美術館の公式サイトでダウンロードできるマップとの併用です。以下のように実体ベースの地図になっているので、位置関係、大きさが直感的にわかります。
逆に、こちらのマップは各美術館の繋がり、分岐ポイントなどがわかりにくいので、併用がオススメです。本記事では、このマップを使って見学ルートを分かりやすくご紹介します。
マップは以下からダウンロードできます。
攻略法2:バチカン美術館の見どころ
バチカン美術館で絶対に見逃せない必見作品を厳選してご紹介します。
プリマ・ポルタのアウグストゥス像:③新回廊
ローマの初代皇帝アウグストゥスの彫像です。アウグストゥスを紹介する写真にも頻繁に使われています。
ラオコーン:④ピオ・クレメンティーノ美術館
トロイの司祭ラオコーンがアポロとポセイドンが放った海蛇で殺される場面を描いた彫像です。
ヴェルベデーレのトレソ:④ピオ・クレメンティーノ美術館
ミケランジェロが、この像のダイナミックさに驚嘆したことでも有名です。なんの像だったのかわからないミステリアスなところも人気の理由だと思います。ピオ・クレメンティーノ美術館には、教皇がコレクションした傑作と言われる彫像がこの他にもたくさんあります。
美しい廊下のギャラリー群
2階の廊下は、彫刻、タペストリー、地図などが展示されているギャラリーになっています。展示もですが、美しく装飾された廊下も見どころです。
アテナイの学堂:ラファエロの間
システィーナ礼拝堂に次いでバチカン美術館で有名な作品がラファエロの間にあるアテナイの学堂です。古代アテネの哲学者たちの様子を描いています。隠れラファエロも描かれています。
システィーナ礼拝堂
バチカン美術館の最大の見どころは、文句なしにミケランジェロにより「最後の審判」や天井画などの傑作が描かれた「システィーナ礼拝堂(Cappella Sistina)」です。
メロッツォ・ダ・フォルリ「奏楽の天使」:絵画館
15世紀を代表するフレスコ画の画家メロッツォ・ダ・フォルリの作品もバチカン美術館の代表作です。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「荒野の聖ヒエロニュモス」:絵画館
未完作品ながらダヴィンチの傑作とされる「荒野の聖ヒエロニュモス」も絵画館に所蔵されています。
必見作品に関しては見学ルートの説明でもっと詳しく紹介します。
攻略法3:システィーナ礼拝堂は大混雑
館内はどこも混雑しますが、最大のハイライトであるシスティーナ礼拝堂は特に混雑します。せっかくのミケランジェロの傑作「最後の審判」や「天井画」をゆっくり鑑賞できません。
システィーナ礼拝堂をゆっくり見学するには、チケットの攻略法でご紹介している先行入場を利用するのも一つの手段です。
そうでない場合は、ベタですが、朝一で入場し、まずシスティーナ礼拝堂まで行ってしまうのが良いと思います。先行入場しているグループはいますが、かなりマシだと思います。
攻略法4:強弱を付けて時間・体力をコントロール
バチカン美術館は、すべて見学すると5時間以上かかります。ゆっくり時間をかけて見学するのも良いですが、館内は混雑しているので歩いているだけで体力を消費します。
見どころである、④ピオ・クレメンティーノ美術館、⑩ラファエロの間、⑫システィーナ礼拝堂、⑲絵画館、にゆっくり時間・体力を使えるようにコントロールしてください。
バッサリとルートをスキップできるところは飛ばしてしまうの良いと思います。
詳細な見学コースは後ほど解説します。
攻略法5:サン・ピエトロ大聖堂へのショートカット通路(閉鎖)
バチカン美術館とサン・ピエトロ大聖堂を両方見学される方も多いと思います。サン・ピエトロ大聖堂もバチカン美術館と同じように入場待ちの行列が長いので、両方で行列に並ぶと時間や体力を消耗します。
両方を効率的に周る裏技として、ネットやガイドブックなどで紹介されているルートがあります。システィーナ礼拝堂にある出口の一つからサン・ピエトロ大聖堂のセキュリティチェック後のエリアに直接出られるルートです。
この出口は2022年現在閉鎖されているようです(出所:romewise)。
攻略法6:写真撮影はできる?
バチカン美術館内は、システィーナ礼拝堂を除いて、写真を撮影できます。システィーナ礼拝堂での撮影は厳禁ですので、ご注意ください。
なお、フラッシュを使った撮影は禁止されています。
攻略法7:見学時間の目安は?
上でも書いたように、すべて見学すると5時間以上かかります。
④ピオ・クレメンティーノ美術館、⑩ラファエロの間、⑫システィーナ礼拝堂、⑲絵画館など見どころだけに絞ると2時間弱です。
途中をざっくりカットしたり、早足で通り過ぎたり、することで見学時間をコントロールできますが、3~4時間が標準だと思います。
バチカン美術館の見学コース・マップ
バチカン美術館の見学コース
バチカン美術館の公式マップに記載されている標準的な見学コースは以下の通りです。()で括ってある美術館はスキップできる美術館です。⑩ラファエロの間もスキップできますが、さすがにもったいないです。
↓
①エジプト美術館
↓
(②キアラモンティ美術館/③新回廊)
↓
④ピオ・クレメンティーノ美術館
↓ 2階へ
(⑤エトルリア博物館)
↓
2階廊下:⑥大燭台のギャラリー/⑦タペストリーのギャラリー/⑧地図のギャラリー/ピウス5世の居室
↓
ソビエスキ王の間/無原罪のお宿りの間
↓
⑩ラファエロの間
↓ 1階へ
(⑪ボルジアの間)
↓
⑫システィーナ礼拝堂
↓
1階廊下:⑬サン・ピエトロ・マルティーレ礼拝堂/アルドブランディーニの婚礼の間/⑬キリスト教美術館
↓
⑲絵画館(ピナコテーカ)
↓
出口
バチカン美術館のマップ
上のコースをマップ上に追記しました。マップをクリックすると拡大します。画像として保存しておいて便利かもしれません。
(1)公式サイトのマップ
(2)ルートマップ
面倒ですが、上の2つのマップを見比べながら見学コースをトレースしてみてください。
見学コースを確認する上でのポイントは以下です。
一方通行を確認する。スタート地点側とシスティーナ礼拝堂側をつなぐ廊下(全長350m)は、基本的に2階が左→右、1階が左←右の一方通行。
システィーナ礼拝堂にダイレクトに行くには、スタート地点から左側にある階段を上り2階の廊下をひたすら進む。廊下の突き当りにシスティーナ礼拝堂(Cappella Sistina)へショートカットする階段があるので、そこを降りる。
バチカン美術館へのアクセス・入場の仕方
マップのスタート地点に到着するまでの地下鉄最寄駅からバチカン美術館へのアクセス、入場方法は以下の記事で詳しく解説しています。まずはこちらを参照してください。
上記記事から続いて説明します。入場して階段またはエスカレーターを上がるとLOWER FLOOR(1階)のスタート地点に着きます。
美術館内には、以下のような案内板があちこちにあります。基本的には、案内板通りに進めば、システィーナ礼拝堂(Cappella Sistina)など目的地にたどり着けますが、やはり全体的な位置関係を把握していないと迷います。スタート地点から左手に進むと、最初の見学ポイント①エジプト博物館があります。システィーナ礼拝堂も案内に書かれている通り左手です。右手に進むと⑲絵画館(ピナコテーカ)です。
スタート地点からまっすぐ進むと中庭に出ます。正面にサン・ピエトロ大聖堂のクーポラが見えます。その手前にはバチカン宮殿があります。左手の建物がバチカン美術館の長い廊下で、右手が絵画館です。
エリア(1) 1階ピーニャの中庭周辺 (エジプト博物館、キアラモンティ美術館、新回廊)
最初に見学するエリア(1)の①エジプト博物館、②キアラモンティ美術館、③新回廊は、以下の地図の通り、スタート地点からピーニャの中庭を取り囲む建物・回廊を見学します。
新回廊を見学し終わったら、②キアラモンティ美術館を戻って、最初のハイライト④ピオ・クレメンティーノ美術館へ向かいます。
①グレゴリアーノ・エジプト博物館: Museo Gregoriano Egizio
スタート地点の左手にグレゴリアーノ・エジプト博物館の入口があります。
グレゴリオ・エジプト博物館(Gregorian Egyptian Museum)は、教皇グレゴリオ16世の指示で作られた博物館です。古代エジプトやローマ統治下のエジプトの美術品が展示されています。1970年代に古代中近東の美術品がコレクションに追加されました。
埋葬時に被せられたマスクです。紀元前2世紀のころの作品です。
紀元前945年~715年に続いたエジプト第22王朝時代の木棺です。
9つある部屋の後半には、バビロニアなど古代中近東の展示があります。アッシリア王センナケリブの弓隊のレリーフです。
②キアラモンティ美術館: Museo Chiaramonti
エジプト博物館を抜けると、長い回廊にたくさんの彫刻が置かれている②キアラモンティ美術館があります。
教皇ピウス7世キアラモンティ(1800-1823)にちなんで名付けられた美術館で、1000体を超える彫像が並んでいます。
このエリアには必見といえる作品はないので、この回廊を進んだ右手にある③新回廊まで進みます。
③新回廊: Braccio Nuovo
新回廊も教皇ピウス7世の指示で整備され、彫刻の傑作が美しい回廊に並んでいます。ナポレオン統治下、フランスに没収された美術品を取り戻したものが展示されています。
プリマ・ポルタのアウグストゥス像: Augustus from Prima Porta
「プリマ・ポルタのアウグストゥス像」は紀元前1世紀初頭のもので、プリマ・ポルタにあったアウグストゥスの妻リビアのヴィラに置かれていたものです。
ナイル: Nile
この像は1513年にカンポ マルツィオで発見されたものです。もともとはエジプトの神殿にあったもので、スフィンクスなどエジプトをイメージさせるものが彫られています。
新回廊の見学が終わったら、キアラモンティ美術館の入口まで戻り、次のピオ・クレメンティーノ美術館へ移動します。
エリア(2) ④ピオ・クレメンティーノ美術館: Museo Pio Clementino
バチカン美術館、最初のハイライトが④ピオ・クレメンティーノ美術館(Pio Clementino Museum)です。
クレメンス14世が1771年に設立し、その後、ピウス6世が拡張したので、ピオ・クレメンティーノ美術館という名前になっています。
歴代の教皇が収集したギリシア・ローマ彫刻が展示されています。
教皇ユリウス2世(1503-1513)のコレクションが、そもそもの始まります。
シピオーネの石棺: Sarcofago of Scipione Barbato
美術館に入ってすぐのところに花崗岩でできた巨大な石棺があります。第二次ポエニ戦争でハンニバルを倒した英雄スキピオ(シピオーネ)・アフリカヌスの祖先の遺骨が収められていました。紀元前280~270年に作られました。
八角形の中庭: Cortile Ottagono
八角形の中庭には、噴水を中心にバチカン美術館を代表する彫像が展示されています。
ラオコーン:Laocoön
ラオコーンは、1506年にローマで発見され、教皇ユリウス2世がすぐに購入したくらい、当時から重要な彫刻でした。紀元前40~30年に作られたとされています。
題材になっているラオコーンは、トロイ戦争で有名なトロイの司祭で、木馬を城内に入れるのに反対した人物です。ギリシアにとって邪魔だった彼は、アポロとポセイドンが送った海蛇によって息子二人と一緒に殺害されました。
ヴェルベデーレのアポロ: Belvedere Apollo
ヴェルベデーレのアポロも教皇ユリウス2世のコレクションです。この彫刻も多くの人から称賛され、18世紀ドイツの美術史家ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンは「現存する古代作品の中で、この彫像は芸術の最高の理想を表している」と評しています。
ペルセウスの勝利: Perseus Triumphant
他の作品と比べると新しく、アントニオ・カノーヴァが1800年~1801年にかけて彫った作品です。ペルセウスがメデューサの首を掲げている、ギリシア神話では有名なシーンです。
動物の間: Sala degli Animali
動物の間には、動物をモチーフにした多くの彫刻が並んでいます。
ミューズの間: Sala delle Muse
ミューズの間は1784年に一般公開されました。天井には、トンマーゾ・コンカによるアポロとミューズのフレスコ画が描かれています。
ヴェルベデーレのトレソ: The Belvedere Torso
この部屋の中心に展示されているのが紀元前1世紀にアテネの彫刻家アポロニオスが作成した「ヴェルベデーレのトレソ」です。像のダイナミックさにミケランジェロが驚嘆したことでも有名です。なんの像だったのか、何世紀にわたって推測がなされてきましたが、現在は英雄アヤックスが自殺を企てている像だという説が一般的です。
円形の間: Sala Rotonda
ブラスキのアンティノス: The Braschi Antinous
1972年にハドリアヌスのヴィラと推定される場所から発掘された彫像です。1844年までローマのブラスキ宮殿に飾られていました。
ハドリアヌス帝の男娼であった美少年アンティノスの像です。
ヘラクレス: Heracles
盆を取り囲む像の中でも一番目立つのが、黄金に塗られたヘラクレスのブロンズ像です。1864年にカンポ ディ フィオーリ付近で発掘されました。紀元前3世紀ころの作品です。
ギリシャ十字の間: Sala a Croce Greca
最後が教皇ピウス6世時代に建築家ミケランジェロ・シモネッティが建設したギリシャ十字の間(Sala a Croce Greca)です。
コンスタンシアの石棺: Sarcophagus of Costantia
この部屋には左右2つの斑岩でできた巨大な石棺があります。円形の間の背にして、右側にあるのがコンスタンティヌス帝の一人娘コンスタンシアの遺体を納めた石棺です(下の写真)。左側にあるのがコンスタンティヌス帝の母親ヘレナの遺体を納めていた石棺です。
ギリシャ十字の間を出たところにある階段で2階へ上がりましょう。
エリア(3) 2階通路 (⑤エトルリア博物館~ピウス5世の居室)
2階には、長い通路があり、⑥大燭台のギャラリーからピウス5世の居室まで続いています。
ピオ・クレメンティーノ美術館を出て階段を二階まで上がります。時間がない場合は、⑤エトルリア博物館の見学をスキップして、システィーナ礼拝堂方面へつながる通路を進みましょう。
⑤グレゴリアーノ・エトルリア博物館: Museo Gregoriano Etrusco
エトルリアは、紀元前8世紀から紀元前1世紀、イタリア半島の中部にあった国家です。台頭してきたローマに併合されてしまいましたが、独自の高度な文化を持った国家でした。
教皇グレゴリオ16世によって設立されたエトルリア博物館には、エトルリアの優れた文化で作られた美術品が展示されています。
エトルリア博物館はかなりの広さがあるので、展示をじっくり見学していると時間がかかります。
このようなエトルリア様式の壺、食器や、石棺などの展示がああります。
⑥大燭台のギャラリー: Galleria dei Candelabri
エトルリア博物館から元の階段の場所に戻ります。⑥大燭台のギャラリー、⑦タペストリーのギャラリー、⑧地図のギャラリーが続く通路があります。
一番手前にある大燭台のギャラリーは、名前の通り、部屋の脇に大きな燭台が置かれています。
ペルシャの戦士: Guerriero Persiano
独特な帽子をかぶったペルシャの戦士の像です。古代ギリシアの彫刻をローマで2世紀頃に複製されたものだと言われています。
⑦タペストリーのギャラリー: Galleria degli Arazzi
大燭台のギャラリーからタペストリーのギャラリーへ続きます。
27枚の巨大なタペストリーが展示されています。オリジナルのうち10枚はシスティー礼拝堂に飾るために、教皇の依頼でラファエロや弟子たちが下絵を書き、ブリュッセルの工房でおられたものです。その後、盗難やフランスによる占領があり、現在展示されているものは織り直されたものです。
⑧地図のギャラリー: Galleria delle Carte Geografiche
続いて地図のギャラリーになります。教皇グレゴリー13世(1572-1585)が地理学者イグナツィオ・ダンティに描かせた40枚の地図が展示されています。1580年から1585年に描かれたものです。
地図にはネプチューンなどのなど実在しないものも描かれています。
ピウス5世の居室: Appartamento di Pio V
教皇ピウス5世(1566-1572年)の居室だった部屋です。芸術家列伝で有名なジョルジョ・ヴァザーリが制作したフレスコ画があります。タペストリーは15~16世紀にフランドルで制作されたものです。
エリア(4) ⑩ラファエロの間: Stanze di Raffaello
ピウス5世の居室で長かった廊下も終わりです。左に進むと、⑩ラファエロの間に続く、ソビエスキ王の間、⑨無原罪のお宿りの間があります。システィーナ礼拝堂へ直接進む場合は、左に進まず、ショートカットの方向へ進みます。
ソビエスキ王の間: Sala Sobieski
通路はピウス5世の居室で突き当りになるので、左側にあるソビエスキ王の間へ進みます。
飾られている大きな絵画は、ヤン・マテイコ作の「ソビエスキ、ウィーンを解放する」です。ポーランド王ヤン3世ソビエスキが、1683年にウィーン包囲戦でオスマン帝国を撃退した様子を描いています。
⑨無原罪のお宿りの間: Sala dell’Immacolata
ピウス9世が1854年12月8日に行われたによる無原罪のお宿りの教義の宣言を祝って、フランチェスコ・ポデスティにより描かれたフレスコ画があります。部屋には、宣言の原稿を収めるためのケースも置かれています。本物はバチカン図書館に保存されており、現在はコピーが展示されています。
この先はラファエロの間の火炎の間に続いていますが、混雑時は一方通行になっていて進めません。左にある通路で一番奥のコンスタンティヌスの間へ移動します。
バチカン美術館の2つめのハイライトが⑩ラファエロの間(Stanze di Raffaello)です。
コンスタンティヌスの間、ヘリオドロスの間、署名の間、ボルゴの火災の間の4つの部屋があります。混雑している時は、奥のコンスタンティヌスの間から見学します。
教皇ユリウス2世が自分の居住用に整備した場所です。教皇の命で、1508年から1524年の間にラファエロと工房の弟子によって描かれました。ラファエロが1520年に亡くなったため、弟子たちが完成させました。
コンスタンティヌスの間: Sala di Costantino
コンスタンティヌスの間は、レセプションや公的儀式を執り行うための部屋です。ラファエロの死後に弟子たちによって完成されました。部屋の名前は、キリスト教の信仰を初めて認めたローマ皇帝コンスタンティヌスに由来しています。
コンスタンティヌスの寄進状
コンスタンティヌス帝がローマ教皇シルベスターにひざまずき、領地の寄進を申し出たシーンが描かれています。真偽不明の寄進状は、中世以降もローマ教皇領の正当性の証明として利用されてきました。
この他にも、十字架の出現、ミルウィウス橋の戦い、コンスタンティヌス帝の洗礼など作品がありますが、すべて弟子の手によるものです。
ヘリオドロスの間: Stanza di Eliodoro
続くヘリオドロスの間は、教皇のプライベートスペースで、この部屋にある絵画「ヘリオドロスの神殿からの追放」に由来しています。ラファエロの手による作品が2点あります。
聖ペテロの釈放
窓からの光の効果を巧みに利用したラファエロ自身の手による傑作です。最初の教皇になったペテロを教皇ユリウス2世と重ね合わせています。
ボルセーナのミサ
こちらもラファエロ自身の手による作品です。教義を疑っていた僧侶がボルセーナでミサを行ったさい、実際にパンから血が流れたという奇跡を描いています。
ヘリオドロスの神殿からの追放
ヘリオドロスの間の名前の由来になった絵画です。エルサレムに宝を奪いに来たシリアの宰相ヘリオドロスが、神の軍隊に打ち負かされる様子を描いています。
教皇レオとアッティラの会談
教皇レオ1世がフン族のアッティラ王との停戦交渉に成功し、攻撃をしりぞけた様子を描いています。
署名の間: Stanza della Segnatura
署名の間は、ラファエロが最初に手掛けた部屋で、1511年に完成しました。ラファエロの代表作「アテナイの学堂」など傑作が集まっている部屋です。ユリウス2世は、この部屋を私設図書室として利用していました。
作品は、人間の精神の最大の3つ、真実、善、美を表しています。
アテナイの学堂
ラファエロの作品の中で最も有名な作品の一つがアテナイの学堂です。古代アテネの哲学者たちの様子を描いています。
真ん中でプラトンとアリストテレスが議論をしながら歩いています。この絵画はルネサンスの巨匠がモデルになっていることでも有名です。プラトンはレオナルド・ダ・ヴィンチがモデルになっています。二人の左下で肘を付いて座っているのがヘラクレイトスです。ミケランジェロがモデルになっていると言われています。
見落としては行けないのが、右端にちょこっと顔を出しているラファエロ本人です(隠れラファエロ)。よく見る自画像と同じ顔をしているので、すぐに分かります。隣にいる白いベレー帽をかぶったのが同時代の画家ソドマだと言われています。ユリウス2世は最初、ソドマに署名の間の絵を描かせましたが気に入らず、変わりにラファエロにしたという話もあります。
聖体の論議
ラファエロが最初に描いたされるのが聖体の論議です。上部にはペテロ、ダビデなど聖人が、下部にはシクストゥス4世など中世イタリアの人物が描かれています。右側には、桂冠つけたダンテもいます。ダンテの後ろに、ぼやっと見える黒装束の男は、ドミニコ修道士会のサヴォナローラと言われています。
枢要徳
窓がある壁の上部のルネットには、ラファエロの手による枢要徳が描かれています。
この他のパルナッソス山もラファエロの作品です。
ボルゴの火災の間: Stanza dell’Incendio di Borgo
ボルゴの火災の間の名前も、この部屋に描かれた絵画のタイトルに由来しています。ユリウス2世を継いだレオ10世の時代には食堂としても使われました。
この部屋の絵画のほとんどは、ラファエロの下絵を元に弟子が完成させました。
ボルゴの火災
この部屋の名前の由来になった作品です。847年にローマ近くのボルゴで発生した火災を、レオ4世の奇跡で鎮火したという奇跡が描かれています。ラファエロの作という説もあります。
オスティアの戦い
9世紀に、ローマの港オスティア湾で教皇軍とサラセン人の海賊で行われた戦いの様子を描いています。
レオ3世のカール大帝への授冠
教皇レオ3世が自分を支援したカーツ大帝を皇帝として戴冠させている様子を描いています。
この他にも「レオ3世の宣誓」が描かれています。
ラファエロの4つの間の見学を終えたあと、ソビエスキ王の間に戻ってシスティーナ礼拝堂へ直接行くか、以下で紹介するウルパヌス8世の礼拝堂の先の階段を降りて⑪ボルジアの間を見学するか、ルートを選べます。
エリア(5) 南側1、2階(ウルパヌス8世の礼拝堂、⑪ボルジアの間)
このエリアは、ラファエロの間を出て、最大のハイライトのシスティーナ礼拝堂までの、悪く言うとつなぎのエリアです。
廊下の端のピウス5世の居室まで戻れば、ボルジアの間の見学をスキップしてシスティーナ礼拝堂へ行くことができます。
ウルパヌス8世の礼拝堂: Cappella di Urbano VIII
ボルゴの火災の間から次のエリアに向かう途中に、ウルパヌス8世の礼拝堂があります。1631年に教皇ウルパヌス8世で建築された5✕4.4mの小さな礼拝堂です。金色に装飾された漆喰の壁が特徴的です。
⑪ボルジアの間: Appartamento Borgia
ウルパヌス8世の礼拝堂の先の階段を降りるとボルジアの間(Appartamento Borgia)の入口です。
チェーザレ・ボルジアでも有名なスペイン出身のボルジア家から出た教皇アレクサンデル6世が住居として使っていたエリアです。
14の部屋があり、有名なのは巫女の間、使徒信条の間、自由七学芸の間、諸聖人の間、奥儀の間です。ピントゥリッキオによりフレスコ画が描かれてる部屋があります。
途中、階段を上がると、現代美術の展示エリア(Collezione d’Arte Contemporanea)になります。
階段を上がった先は近代的な空間で、現代美術が展示されています。
フランシス・ベーコン「ベラスケスのインノケンティウス10世肖像の習作」(1961年)
ベラスケスが描いたインノケンティウス10世肖像をベースにフランシス・ベーコンが描きました。
エリア(6) システィーナ礼拝堂: Cappella Sistina
システィーナ礼拝堂には複数の出入り口がありますが、以下は「最後の審判」が描かれている西側の出入り口です。
礼拝堂の内部は写真撮影が禁止されています。隠れて写真を撮影しているモラルのない観光客もいましたが、警備員が厳しくチェックして注意されていました。
バチカン美術館の最大の見どころである「システィーナ礼拝堂(Cappella Sistina)」は、彫刻家として有名なミケランジェロによるフレスコ画「最後の審判」や天井画などの傑作が描かれています。
システィーナ礼拝堂の名前は、古い礼拝堂を1977年から1480年にかけて修復し、現在の形にさせた教皇シクストゥス4世に由来しています。当初、天井には、ピエールマッテオ・ダ・アメリアにより星空が描かれていました。その上にミケランジェトが現在のフレスコ画を描きました。
ローマ教会でもっとも神聖な場所の一つで法王を選ぶ選挙「コンクラーベ」が行われることでも有名です。
システィーナ礼拝堂内は、とにかく人でごった返していてミケランジェロの傑作をゆっくり鑑賞することが難しいです。ですので、朝一に他の展示をスキップしてシスティーナ礼拝堂をまず見学してしまうのも、アリだと思います。
シスィスティーナ礼拝堂天井画
天井には、ミケランジェロが1508年から1512年にかけて制作したフレスコ画があります。
制作のために、天井に届く高さの足場が設置されました。ミケランジェロは足場の上で天井を見上げながら描くという重労働を長期に渡り続けることになりました。その苦労の成果が、この天井画です。
中央には、聖書の創世記に書かれている9つの場面が描かれています。祭壇側から見ると、正しく見ることができます。
光と闇の分離、太陽、月、創造、大地と水の分離、アダムの創造、エヴァの創造、楽園追放、ノアの献身、ノアの大洪水、ノアの泥酔の9つの場面です。以下の「アダムの創造」「楽園の追放」など、どのシーンも生き生きと描かれています。
最後の審判
礼拝堂の西側の壁には、13m✕14mのミケランジェロ作の巨大なフレスコ画「最後の審判」(Giudizio Universale)が描かれています。天井を完成させた20数年後、教皇クレメンス7世の指示で描かれました。
絵の題材である最後の審判は、キリスト教の教えにある最後の日にキリストが復活し、天国で永遠に生きるものと、地獄に落ちるものを審判するというものです。そのため、キリストを中心に上部には天国が、下部には地獄が描かれています。
キリストの右下にいるのが聖人バルトロメオです。彼は生きたまま皮を剥がされて殉教しています。最後の審判でも、剥がされた自分の皮をもっています。この皮の顔はミケランジェロの自画像になっています。
シスィスティーナ礼拝堂には、この他にも南側の壁には、モーセの生涯が、北側の壁には、キリストの生涯が描かれています。
こちらは南側の壁にあるボッティチェルリと弟子達の作「聖ペテロへの天国の鍵の授与」です。
こちらは北側の壁に描かれたペルジーノ作「聖ペテロへの天国の鍵の授与」です。
攻略法で解説したサン・ピエトロ大聖堂へ抜けられるグループ専用の通路は、最後の審判を背にして奥の右側に出口があります。
エリア(7) バチカン図書館
システィーナ礼拝堂を出たら、2階でひたすらシスティーナ礼拝堂へ進んだ廊下の1階を入口側へ戻ります。バチカン図書館と呼ばれるエリアですが、バチカン秘密文書館には入ることができません。
サン・ピエトロ・マルティーレ礼拝堂: Cappella di San Pietro Martire
バチカン美術館エリアの最初にあるのがサン・ピエトロ・マルティーレ礼拝堂(Cappella di San Pietro Martire)です。1566年から1570年の間に建設されました。
サン・ピエトロ・マルティーレの礼拝堂は、教皇ピウスV世によって建造されました。フレスコ画には聖ピエトロ・マルティーレが描かれています。ジョルジョ・ヴァザーリと弟子のヤコポ・ズッキによる作品です。
⑬アルドブランディーニの婚礼の間: Sala delle Nozze Aldobrandine
少し進むと、廊下の左手(西側)に「アルドブランディーニの婚礼」などのフレスコ画が展示されている部屋があります。
アルドブランディーニの婚礼
ローマ時代に描かれた婚礼の様子が描かれているフレスコ画です。アルドブランディーニ家が長い間、所有していたため、この名前で呼ばれています。
⑬キリスト教美術館: Museo Cristiano
次に続くのが、⑬キリスト教美術館(Museo Cristiano)です。ベネディクト14世の指示で整備された美術館です。
カタコンベ(地下墓地)で発掘された初期のキリスト教徒の遺物など、キリスト教信仰に関連する品が展示されています。
⑯世俗博物館: Museo Profano
バチカン図書館の通路の最後のエリアは、世俗博物館(Museo Profano)です。
世俗(Profano)という名称だけあって、キリスト教美術館に展示されているキリスト教信仰とは異なる、コイン、カメオ、キリスト教以外の宗教・文化の展示品が並んでいます。
廊下の突き当りには下り階段があります。降りて、最後のハイライト絵画館(Pinacoteca)に移動します。
エリア(8) 絵画館: Pinacoteca
絵画館には、年代・作者によって分類された17の展示ルームがあります。
以下、 絵画館の必見作品を部屋番号順にご紹介します。
Nicolaus and Johannes「最後の審判」(12世紀) : ROOM I
12世紀に書かれたテンペラ画で、システィーナ礼拝堂の最後の審判と同じ題材を描いています。
ジョット・ディ・ボンドーネと工房「ステファネースキの祭壇画」(1320年) : ROOM II
以前はサン・ピエトロ大聖堂の飾られていたジョット・ディ・ボンドーネ作の祭壇画です。
メロッツォ・ダ・フォルリ「奏楽の天使」(1480年) : ROOM IV
メロッツォ・ダ・フォルリは15世紀を代表するフレスコ画の画家です。教会の後陣に描かれていたフレスコ画が14片が展示されています。
メロッツォ・ダ・フォルリ「バルトロメオ・プラティナを館長に任命するシクストゥス4世」(1477年) : ROOM IV
同じフォルリの作品です。もともとはバチカン図書館にあったフレスコ画です。シクストゥス4世によって人文主義者のバルトロメオ・プラティナが初代館長に任命されたシーンを描いています。ひざまずいているのがバルトロメオ・プラティナです。
ペルジーノ「聖母子と聖ラウレンティウス、トゥールーズの聖ルートヴィヒ、エルコラヌス、コンスタンス」(1495-96年) : ROOM VII
宗教画で一般的なモチーフである聖母子を取り囲む聖人達を描いた15世紀のペルジーノの絵画です。
ラファエロ「主イエスの変容」(1516-1520年) : ROOM VIII
ROOM VIIにはラファエロの3枚の作品が並んでいます。
中央は、イエス・キリストが、弟子たちの前でモーセたちと語り合いながら光り輝く姿を描いた絵画です。
ラファエロ「フォリーニョの聖母」(1511-1512年) : ROOM VIII
もともとはローマの聖マリア教会のために描かれた聖母像です。一時、フランスに接収されていましたが、イタリアに戻ってきた際、絵画館のコレクションに加えられました。
ラファエロ「聖母戴冠」(1502-1504年) : ROOM VIII
3枚並んだラファエロの作品の中で一番若い時期に書かれた絵画です。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「荒野の聖ヒエロニュモス」(1480-1482年) : ROOM IX
ダ・ヴィンチは未完作品が多いですが、これもその一つです。荒野を放浪し、ぼろぼろになりながらも神に祈りをささえる聖ヒエロニュモスを描いています。
ベッリーニ「死んだキリストへの嘆き」(1473-76年) : ROOM IX
バロッチ「チェリーのマドンナ」
エジプトへ逃避行中の聖家族を休息している姿を描いています。
カラヴァッジオ「キリストの埋葬」(1600-1604年) : ROOM XII
カラヴァッジオの傑作の一つです。闇を使って主体を浮き上がらせる、いう手法を使っています。キリストの埋葬というタイトルで呼ばれていますが、お墓に埋葬されておらず、石版の上に遺体を置こうとしています。
以上、絵画館の必見作品をご紹介しました。これでバチカン美術館の主要エリアの見学コースを終了です。
出口は、スタート地点のそばにある2重螺旋階段です。Uscita / Exitの表示がある方へ進みます。
以上、バチカン美術館の見どころ、見学コース、マップなど見学に役立つ情報を詳しくご紹介しました。
バチカン美術館とセットで見学することが多いサン・ピエトロ大聖堂について、以下の記事で詳しく解説しています。