「ウフィツィ美術館」の必見作品を逃さず、効率的に見学するための館内マップや見学コースなど、攻略法をわかりやすく解説します。
ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)には、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』『プリマヴェーラ』、レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』など、絶対に見逃せない名画が多く展示されています。
そこで本記事では、ウフィツィ美術館館内の構造をできるだけ分かりやすくご紹介し、見学コースにしたがって必見作品を詳しくご紹介します。
ウフィツィ美術館は、大人気のため、事前にチケットを予約しておかないと長蛇の列に並ぶはめになります。
チケット予約の方法は、下記記事で詳しく解説しているので、まだチケットを予約していない方は、こちらを先にご覧ください。
目次
新型コロナ営業再開後のウフィツィ美術館 最新情報(2022年8月更新)
ウフィツィ美術館は、新型コロナウィルスの影響で一時期閉鎖されていましたが、現在は通常通り営業しています。
ウフィツィ美術館 見学の攻略法
ウフィツィ美術館を見学する上で、事前にしっておくべきポイントをご紹介します。
攻略法1:ウフィツィ美術館とは?
ルネサンス発祥の地フィレンツェにあるウフィツィ美術館は、ルネサンス期の絵画に関して世界有数のコレクションを有する美術館です。
「ウフィツィ」はイタリア語で「オフィス」を意味します。この名前の通り、ヴァザーリの設計で1580年に完成したフィレンツェの政庁を美術館として利用しています。
メディチ家出身のフランチェスコ1世が自家のコレクションを政庁内に展示するように指示したのが、美術館としての起源になっています。当時、美術品を展示した部屋「トリブーナ」を現在も見学できます。
18世紀にメディチ家が断絶した後、唯一の血族であったアンナ・マリア・ルイーザがメディチ家のコレクションを政府に寄付することになり、1769年からウフィツィ美術館として一般に公開されるようになりました。
攻略法2:ウフィツィ美術館の見どころ
記事中ではウフィツィ美術館の必見35作品を紹介していますが、最初に8作品を厳選してご紹介します。
① ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』:Room 10-14
知らない人がいないくらい有名な絵画がボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』です。初期ルネサンスの傑作に、心を奪われること間違いなしです。
② 『プリマヴェーラ』:Room 10-14
『ヴィーナスの誕生』と対幅で描かれたといわれているのが『プリマヴェーラ』です。某イタリアンレストランの影響で、こちらも知名度が抜群に高い絵画です。
③ レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』:Room 35
ダヴィンチの絵画は真作が15点前後しか現存せず、非常に貴重です。ウフィツィ美術館には、デビュー作にして傑作の『受胎告知』が展示されています。
④ レオナルド・ダ・ヴィンチ『東方三博士の礼拝』:Room 35
ダヴィンチの未完の大作『東方三博士の礼拝』も長期間に渡る修復が完了し、展示されています。
⑤ ミケランジェロ『聖家族』:Room 35
彫刻家が本業のミケランジェロの貴重な絵画です。システィーナ礼拝堂の天井画を描く直前の作品です。
⑥ ラファエロ『ヒワの聖母』:Room 66
ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並ぶルネサンス三大巨匠のラファエロの名画『ヒワの聖母』です。逆ピラミッド型の構図からは、ダ・ヴィンチの影響を強く受けていることが分かります。
⑦ ピエロ・デラ・フランチェスカ『ウルビーノ公夫妻の肖像』:Room 8
ルネサンス期でもっとも有名な肖像画の一つ『ウルビーノ公夫妻の肖像』も展示されています。
⑦ ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』:Room 83
愛の女神ヴィーナスが官能的に描かれているのがティツィアーノの『ウルビーノのヴィーナス』です。ボッティチェッリの描くヴィーナスと比べて見るのも面白いと思います。
⑧ カラヴァッジオ『メデューサ』:Room 90
明暗を活用し、神話などをリアルかつ劇的に描いたカラヴァッジオの傑作『メデューサ』です。
攻略法3:朝一の入場をおすすめ
人気の美術館はどこでも同じですが、事前予約で入場の列を回避しても、館内が激混みです。
ウフィツィ美術館の館内も、このように人気作品の周りには人だかりができていて、鑑賞もままなりません。
したがって、名画をゆっくり鑑賞した場合は、オープン時間の入場がベストです。
私は朝一に入場し、1周目、必見作品だけを鑑賞して、どんどん先に進んだのでダ・ヴィンチの名画も独り占めできました(上品な鑑賞方法ではありませんが)。
攻略法4:写真撮影はできる?
ウフィツィ美術館内は、写真撮影が可能です。
ただし、フラッシュを使った撮影、自撮り棒、三脚などの使用は禁止されています。
攻略法5:見学の所要時間は?
必見作品に絞ってても、館内が混んでいるので2時間くらいかかります。全体をしっかり見ると、3~4時間以上かかります。
攻略法6:貸出中の作品は?
2014年に日本で「ウフィツィ美術館展」が開催されたように、ウフィツィ美術館の名画は貸し出されて、鑑賞できない場合があります。
主要作品が貸し出される場合、公式ホームページのNews and promoの欄に掲載されることもあるので、チェックしてみてください。
ウフィツィ美術館へのアクセス・入場の流れ
事前予約したチケットを受け取って、ウフィツィ美術館の館内に入場するまでの流れは、こちらの記事で詳しく解説しています。まずは、こちらを参照してください。
ウフィツィ美術館の見学コース・マップ
ウフィツィ美術館のわかりやすいマップがWikipediaに掲載されていたので、これを利用して解説します。
ウフィツィ美術館は、展示室を番号順に回って行けばよく、わかりやすいです。
展示があるのは、PLANTA 2、PLANT 1の2フロアです。それぞれ日本で言えば、3階と2階にあたります。
まずは、マップ左端のエレベーターでPLANTA 2(3階)まで上がります。3階を見終わったら、2階に降りて見学を続けます。
特に、以下の展示ルームは必見です。
PLANTA 2
10-14:ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』、『プリマヴェーラ』
35:ダ・ヴィンチ『受胎告知』、『東方三博士の礼拝』 ミケランジェロ『聖家族』
PLANTA 1
66:ラファエロ『ヒワの聖母』
83:ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』、『フローラ』
90:カラヴァッジオ『バッカス』
詳細な展示室のレイアウトは、現地でもらえるパンフレットに記載されているので、そちらも参考にしてください。
ウフィツィ美術館の必見作品
見学の流れにしたがって必見作品をご紹介します。
ウフィツィ美術館のオーディオガイド・クローク・ショップ
最初、地上階(GROUND FLOOR)に入館します。以下の場所に、オーディオガイド、クローク、ショップがあります。
オーディオガイドは、6ユーロです。日本語にも対応しています。借りる際には、パスポートを預ける必要があります。
クロークは無料です。
準備ができたら入場の流れにしたがって進みます。まず、階段・エレベーターでPLANTA 2(3階)に上がります。
PLANTA 2(3階)の見どころ
3階には、ルネサンス様式の美しい廊下がU字型に通っています。
廊下の天井も古代ローマにならったグロテスク様式で美しく装飾されています。
隣の展示室には、直接移動できる場合と、廊下に一旦出る場合があります。
混雑してくると人気の展示室には、このように列ができます。ですので、ちょっと下品ではありますが、ボッティチェリのRoom 10-14、ダヴィンチのRoom 35が空いていたら先に見学してしまうのも作戦です。特にオープン直後に入場する場合は、有効な作戦です。
それでは、PLANTA 2の必見作品を紹介します。
チマブーエ『サンタ・トリニータの聖母(荘厳の聖母)』(1290-1300) :Room 2
チマブーエは、イタリアを代表するゴシック期の画家です。ジョットの師としても有名です。
『サンタ・トリニータの聖母』は、もともとフィレンツェのサンタ・トリニータの教会に飾られていたため、この名前で呼ばれています。宗教的に細かく書き方が規定されたビザンティン様式の特徴を残しながらも、自然な顔をしたマリアや天使たちが特徴です。
ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ『聖母子と六天使(ルチェライの聖母)』(1285) :Room 2
ドゥッチョもゴシック期を代表するイタリア人画家です。シエナで活動しました。
この絵画は、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂に飾られていたものです。16世紀にルチェライ家が所蔵していたので『ルチェライの聖母』とも呼ばれています。ドゥッチョは、チマーブエとも一緒に働いていたこともあるため、チマーブエの聖母子像と似た雰囲気があります。
ジョット・ディ・ボンドーネ『荘厳の聖母』(1300-1305) :Room 2
ジョットは、後期ゴシックを代表するイタリア人画家で、建築家でもあります。ドゥオモにあるジョットの鐘楼の設計者としても有名です。
師であるチマブーエの『荘厳の聖母』と似た構成ながら、平面的なチマーブエの作品に対し、遠近法などを取り入れ立体感を与えました。このようなジョットの技法がルネサンス時代の絵画につながっていきます。上の2つの聖母子像と比べながら見ると、ジョットが生み出した立体感をより強く感じられると思います。
シモーネ・マルティーニ『受胎告知』(1333) :Room 3
シモーネ・マルティーニは、国際ゴシック派の先駆けとなったイタリア人画家です。当時はフィレンツェと同じくらい繁栄していたシエナで活躍しました。
有名な受胎告知を描いています。本来、大天使ガブリエルがマリアの純血のシンボルとして手に持つべき百合が奥に置かれています。これは、シエナが当時、フィレンツェと敵対していたため、フィレンツェのシンボルの百合を持たせたくなかったためです。
アンブロージョ・ロレンツェッティ『キリストの神殿奉献』(1342) :Room 3
アンブロージョも同時代にシエナで活躍した画家です。兄のピエトロも画家として活躍しています。
この作品は、シエナ大聖堂のサンクレッセンツィオ礼拝堂のために描かれました。神殿奉献は、立法に従いマリアが生まれたキリストをエルサレムの神殿に捧げに行った様子を描いています。右側にいるのがキリストが救世主であることを預言したシメオンとアンナです。
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ『東方三博士の礼拝』(1423) :Room 5-6
ファブリアーノは、イタリアのファブリアーノ生まれの国際ゴシック派を代表する画家です。
東方三博士の礼拝は、東方からメルキオール、カスパール、バルタザールの三博士が、ベツレヘムの星に導かれキリストの生誕の場にやってきた様子を描いています。三博士の衣装が非常に細かく描かれています。
パオロ・ウッチェロ『サン・ロマーノの戦い』(1435-1440) :Room 8
パオロ・ウッチェロは初期ルネサンスを代表するイタリア人画家の一人です。
『サン・ロマーノの戦い』は、三連の祭壇画の中心に飾られるよう描かれたもので、左と右のパネルの絵画は、それぞれロンドン・ナショナル・ギャラリーとルーブル美術館に所属されています。初期ルネサンス期における、遠近法の発達を見て取れる絵画です。
ちなみにこちらがロンドン・ナショナル・ギャラリーに展示されている作品です。
フィリッポ・リッピ『聖母子と二天使』(1460-1465) :Room 8
リッピは初期ルネサンスのフィレンツェ派を代表する画家です。ボッティチェリの師匠とも言われています。
ゴシック期より人間味があるマリアのモデルは、リッピの妻となった修道女だといわれています。モナ・リザを想起させるような背景や、
外周に描かれているだまし絵の額など、見ていて面白い作品です。
ピエロ・デラ・フランチェスカ『ウルビーノ公夫妻の肖像』(1473-1475) :Room 8
ピエロ・デラ・フランチェスカは、初期ルネサンスのイタリア人画家です。フィレンツェなどイタリアの各地で活動しました。
『ウルビーノ公夫妻の肖像』は、ルネサンス期でもっとも有名な肖像画の一つです。ウルビーノ侯爵フェデリコ・ダ・モンテフェルトロと夫人のバッティスタ・スフォルツァが向かいあっている構図は、古代のコインを参考にしているといわれています。
いよいよ最初のハイライト、ボッティチェッリ作品が展示されるRoom 10-14です。
サンドロ・ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』(1485) :Room 10-14
ボッティチェッリの2作品「ヴィーナスの誕生」と「プリマヴェーラ」は、ウフィツィ美術館を代表する名画です。
フィレンツェ生まれのボッティチェッリは、ルネサンス・フィレンツェ派を代表する画家です。本名は、アレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピといいます。「小さな樽」を意味する「ボッティチェッリ」というあだ名で呼ばれました。本人でなく、お兄さんが小太りだったため、付いたあだ名というところが、ちょっとかわいそうです。
代表作『ヴィーナスの誕生』は、誰もが一度は見たことがある有名な絵画です。海から生まれた愛の女神ヴィーナスが貝に乗って、キュプロス島に到着した場面です。左側では、ニンフのクローリス(花の女神フローラ)を抱えた西風の神ゼピュロスが風を吹きかけています。右側では、季節と秩序の女神ホーラが春の花の柄の衣装をかけようとしています。
ロレンツィオ・ディ・メディチの依頼によって描かれたなど来歴は諸説あり、メディチ家のカステッロの別荘に飾られていました。
サンドロ・ボッティチェッリ『プリマヴェーラ』(1480) :Room 10-14
『プリマヴェーラ』は『ヴィーナスの誕生』と対幅で描かれたといわれています。
中心にいるのが女神ヴィーナスです。右端では、ヴィーナスの誕生にも登場するゼピュロスによって、ニンフのクローリスが花の女神フローラに姿を変えられています。そのため、クローリスの口から花があふれだしています。ヴィーナスのすぐ右にいるのが変身後のフローラ(クローリス)です。
左端にはマーキュリーが描かれています。その隣で踊っている左には三美神に、キューピッドが愛の矢を打とうとしています。マーキュリーのモデルは、ロレンツィオ・ディ・メディチまたはジュリアーノ・デ・メディチだと言われています。
サンドロ・ボッティチェッリ『東方三博士の礼拝』(1480-1485) :Room 10-14
『東方三博士の礼拝』は、ボッティチェリ自身が描かれている絵画として有名です。また、メディチ家の人物が多く描かれています。マリアに膝まづく賢者がコジモ、中央の赤いマントがピエロ、その右にジョバンニが描かれています。ほかにもジュリアーノ、ジュリアーノも登場します。
右端のイケメンがボッティチェリです。ぜんぜん「小さい樽」(ボッティチェリ)ではないですね。
サンドロ・ボッティチェッリ『パラスとケンタウロス』(1480-1485) :Room 10-14
学問の女神パラスがケンタウロスの髪の毛をつかんでいます。獣人虐待のシーンに見えますが、暴力などの本能を比喩するケンタウロスを、理性を表すパラスが抑える、というのが主題です。
Room10-14には、他にもボッティチェリの作品が展示されています。タイトルのみ紹介します。
サンドロ・ボッティチェッリ『受胎告知』(1481) :Room 10-14
サンドロ・ボッティチェッリ『受胎告知』(1489-90) :Room
10-14
サンドロ・ボッティチェッリ『マニフィカトの聖母』(1483) :Room 10-14
トリブーナ(Tribuna):Room 18
Room 18は、トリブーナ(Tribuna)と呼ばれる八角形の部屋があります。フィレンツェ政庁として利用されていたころから、メディチ家所有の美術品を展示する部屋として利用されていました。この部屋が美術品鑑賞のために公開されたのが、ウフィツィ美術館の始まりです。
残念ながら内部に入ることはできず、2ヶ所から部屋の内部を鑑賞します。
天井は貝象嵌で装飾されています。メディチ家の財力を感じられます。
3階東側の見学が終わり、U字の底の部分です。美術館に囲まれたウフィツィ広場が見渡せます。
美術館はアルノ側に接して建っています。奥にヴェッキオ橋が見えます。右手間には、ヴァザーリの回廊が見えます。回廊は、ヴェッキオ宮殿からウフィツィ美術館、ヴェッキオ橋を経由してピッティ宮殿まで続いています。「インフェルノ」でラングドン教授が走った回廊です。ヴァザーリの回廊の見学は現在休止中ですが、今後、再開される予定です。
続いて、3階西側を見学します。
3階西側のハイライトは、ダ・ヴィンチの作品が展示されたRoom 35です。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』(1472) :Room 35
フィレンツェから20kmほど離れたヴィンチ村で生まれたレオナルドが、最初に絵画を学んだのがフィレンツェにあったヴェロッキオ工房でした。イタリア各地やフランスを転々としたダヴィンチですが、はやりフィレンツェが故郷だったのだと思います。
ダヴィンチの絵画で、真作と確認されているものは20点もありません。故郷にあるウフィツィ美術館は、そのうち、2点(+1点)が見られる贅沢な美術館です。
中でも素晴らしい作品がこの『受胎告知』です。ヴェロッキオ工房にいた若きダヴィンチのデビュー作でもあります。処女マリアに受胎を伝える大天使ガブリエルを描いています。こちらの『受胎告知』では、ガブリエルがちゃんとフィレンツェの象徴でもある百合の花を手にしています。
聖書に置いた腕が長く、まだ未熟さが残っているなどの評もありますが、ダヴィンチの真作のパワーを感じられる作品でした。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『東方三博士の礼拝』(1482) :Room 35
『東方三博士の礼拝』はフィレンツェ近郊のサンドナート教会の祭壇画として描き始めましたが、ミラノへ旅立ってしまったてめ未完となった作品です。現在、2011年~2017年の長い時間をかけて修復された状態で展示されています。
未完の作品をフィリッポ・リッピが受け取りました。代わりに描いてサンドナート教会に納めた『東方三博士の礼拝』が28室に展示されています。
アンドレア・デル・ヴェロッキオ『キリストの洗礼』(1470-1475) :Room 35
初期ルネサンスの画家アンドレア・デル・ヴェロッキオは、初期ルネサンス期の画家、彫刻家、建築家です。彼の工房でダヴィンチが修行したことでも有名です。ダヴィンチだけでなく多くの弟子を育てた優れた師でした。
『キリストの洗礼』はフィレンツェの修道院の依頼でヴェロッキオの工房で制作されたもので、ダヴィンチ、ボッティチェリなども制作に加わったといわれています。
当時、二十歳そこそこだったダヴィンチは、天使や背景を描いたとされています。全体がテンペラ画で描かれているのに対し、当時最新の手法であった油絵で描かれています。
ミケランジェロ・ブオナローティ『聖家族』(1505-1506) :Room 35
ルネサンスの巨匠ミケランジェロが『ダヴィデ像』を制作した翌年に、豪商アニョロ・ドーニの結婚記念に依頼されたのが『聖家族』です。ミケランジェロがパネルに描いた絵画は3枚しかなく、貴重な作品です。ミケランジェロはこの後、システィーナ礼拝堂天井画を描くため、ヴァチカンへ向かいます。
構図は、ダヴィンチが描いた『聖アンナと聖母子』に影響を受けていると言われていますが、筋骨隆々なマリアには彫刻が本業であるミケランジェロっぽさが出ています。背景に5人の裸の男を描いた理由は「子宝を望んで」など諸説ありますが、結論が出ていません。
ラファエロ・サンティ『アーニョロ・ドーニの肖像 / マッダレーナ・ドーニの肖像』(1504-1507) :Room 41
ラファエロがフィレンツェの豪商アーニョロ・ドーニと妻のマッダレーナ・ドーニを描いた対の肖像画です。
夫人の肖像は、モナ・リザと同じポーズをしており、この絵からもラファエロがダヴィンチに大きな影響を受けていることがわかります。ドーニは、上で紹介したようにミケランジェロには『聖家族』を描かせました。三大巨匠の二人に作品を依頼するとは、審美眼に優れた人物だったのかもしれません。
『イノシシ像』(紀元前2-1世紀) :Room 3番廊下
3階西側の通路の突き当りには、ラオコーン像があります。その隣にあるのが彫刻で一番の人気のイノシシ像です。
紀元前2-1世紀に作成された彫刻は、16世紀にローマで発見されました。修復後、ローマ法王からメディチ家に贈らたものです。
PLANTA 1(2階)の見どころ
続いてPLANTA 1(2階)を見学します。3階のような廊下がなく、部屋を順に移動していきます。
2階には、ラファエロ、ティツィアーノ、カラヴァッジョなどの名画が展示されています。
レンブラント・ファン・レイン『老人の肖像(老人ラビ)』(1665) :Room 49
オランダ出身のバロック期の巨匠レンブラントの作品も展示されています。
レンブラントはよく、近所の人をモデルに描きました。この老人もアムステルダムのユダヤ人街に住んでいたラビさんの肖像画とされています。
ナポレオン占領時に、パリに持ちされてましたが、1834年にフィレンツェへ戻りました。
ロッソ・フィオレンティーノ『リュートを弾く天使』(1521) :Room 60
フィオレンティーノの愛称の通り、フィレンツェ生まれのルネサンス期の画家です。フランスに移住し、イタリア・ルネサンスをフランスに伝える役目を果たしました。
天使が可愛く描かれており、人気の作品です。長い間、トリブーナに所蔵されていました。
ラファエロ・サンティ『ヒワの聖母』(1506) :Room 66
ルネサンス三大巨匠の3人目ラファエロの名画も展示されています。
『ヒワの聖母』は、ロレンツォ・ナッシの結婚式のために依頼されました。聖母マリアのひざ元でヒワを持つ洗礼者ヨハネと、手を伸ばすキリストが描かれています。ヒワは、キリストが処刑されるときにも現れており、運命を暗示しているも言えます。ダヴィンチの「アンナと聖母子」などの影響を大きく受け、ピラミッド構造で描かれています。事故で17片に分断されてしまいましたが、復元されて現在の姿になっています。
パルミジャニーノ『長い首の聖母』(1534-1540) :Room 74
パルマ出身のため、パルジャミーノの愛称で呼ばれたマニエリスム初期の画家です。本名は、ジローラモ・フランチェスコ・マリア・マッツォーラといいます。
聖母の長く伸びた首は、王族、貴族で流行したマニエスリムの特徴である不自然さが顕著に表れています。
ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』(1538) :Room 83
ティツィアーノは、盛期ルネサンスのヴェネツィア派を代表する画家です。
ウルビーノ侯爵の依頼で描かれたので『ウルビーノのヴィーナス』と呼ばれています。愛の女神ヴィーナスがかなり官能的に描かれています。フィレンツェでは、ここまで女性が官能的に描かれることは少なく、ヴェネツィア派ならではと言えます。
ルーブル美術館に展示されているマネの『オランピア』は、ヴィーナスを娼婦に置き換えて描いています。
本来、貞操を意味するイヌが寝てしまっており、役目をはたしていません。個人的には、イヌが普通に可愛く描かれているので好きです。
ティツィアーノ『フローラ』(1517) :Room 83
主題は判明していませんが、手に花を持っていることから、花の女神フローラを描いたものとされています。フローラは、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』や『プリマヴェーラ』にも登場しています。
『トゲを抜く少年』(紀元前1世紀)
2階のU字に部分には、ヴェローネ・スッラルノの彫刻のギャラリーがあります。ここに展示されていて、イノシシの劣らずインパクトがある彫刻が『トゲを抜く少年』の像です。
古代ローマで好まれたモチーフで、ローマのカピトリーノ美術館には最古のブロンズ像があります。ウフィツィ美術館にあるのは大理石像版です。足の裏にトゲが刺さっても任務を全うする、ことを表していますが、多くの人は「足の裏がかゆい少年」と思っていることでしょう。
カラヴァッジオ『バッカス』(1598) :Room 90
ウフィツィ美術館の最後のハイライトがRoom 90からのカラヴァッジョの展示です。
カラヴァッジョは、ルネサンスに続いたバロック期の巨匠です。当時から人気の画家で、お金に困ったことはありませんでしたが、乱闘騒ぎをするなど、素行の悪い画家としても有名でした。
頭にブドウの葉の冠を付けたお酒の神バッカスが、絵を見ている人にワインを進めています。
カラヴァッジオ『イサクの犠牲』(1603) :Room 90
アブラハムが大事な息子イサクを神へのいけにえとして捧げようとしている場面です。通常の宗教画では、イサクは従順に命を捧げますが、カラヴァッジョは必死に抵抗する姿を描いています。左にいるのは天使で、アブラハムの信仰を認め、止めようとしています。
カラヴァッジオ『メデューサ』(1597) :Room 90
ペルセウスに首を切られた直後のメデューサの首を描いています。滴る鮮血が衝撃的です。キャンバスに描いたものを木製の盾に張り付けています。
フランチェスコ・マリア・デル・モンテ枢機卿からトスカーナ大公へ贈られた作品です。
アルテミジア・ジェンティレスキ『ホロフェルネスの首を斬るユディト』(1620) :Room 90
アルテミジアは、17世紀のカラヴァッジョ派の画家です。当時としては珍しい女性の画家でした。
アッシリア軍の司令官ホロフェルネスを酔わせて、首を切り落とすユディトが描かれています。強姦事件の被害者となったアルテミジアが、男性社会への強烈な怒りを持って描いたとされています。
グイド・レーニ『ゴリアテの首を持つダヴィデ』(1605) :Room 91
レーニは、17世紀前半のゴシック期のイタリア人画家です。同じボローニャ出身のカラッチに師事しました。
少年ダビデが、倒したゴリアテの首を非常にクールに見つめているのが特徴的です。
以上で、見学コースは終了です。
ウフィツィ美術館のカフェ
3階西側の奥(シニョーリア広場側)には、見晴らしの良いテラスがあります。ドゥオモのクーポラを臨むこともできます。
右側には、ヴェッキオ宮殿のアルフォルノの塔がドーンと迫ります。
訪問時はエスプレッソが、テーブルを利用しないと1.2€、テーブル利用だと4€でした。
参考)ウフィツィ美術館の公式サイト
以上、ウフィツィ美術館の見どころ、必見作品、見学コース、マップなど見学に役立つ情報を詳しくご紹介しました。