ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコなどの名画が見られるマドリードの「プラド美術館」の見どころ作品、お得な入場チケット、お勧めの見学コース、混みぐあい、所要時間など、見学に役立つ情報をわかりやすく解説します。
世界三大美術館に数えられることもある「プラド美術館」(Museo del Prado)は、マドリードで一番人気の観光スポットです。
スペイン王室のコレクションが元になっており、宮廷画家だったベラスケス、ゴヤの作品を豊富に所蔵しています。
また、ルネサンス期のラファエロ、ティントレット、ボス、ティツィアーノ、ブリューゲルや、オランダ/フランドル・バロック期のレンブラント、ルーベンスなど、世界三大美術館の名に恥じない傑作が展示されています。
目次
プラド美術館の攻略ポイント
プラド美術館見学の計画をたてる上で、知っておきたい攻略ポイントをまず解説します。
攻略1:プラド美術館とは?
プラド美術館(Museo del Prado)は、国王フェリペ2世やフェリペ4世などスペイン王室のコレクションを元に、1819年に設立された美術館です。
ソフィア王妃芸術センター、ティッセン ボルネミッサ美術館とともにマドリード三大美術館とされ、マドリードでダントツ人気No.1の観光スポットになっています。
ルーブル美術館、メトロポリタン美術館と並んで世界三大美術館に加えられることもあります(エルミタージュ美術館が3番目説も有力)。
入場者数は年間約350万人で、パリのオルセー美術館に次いで世界14位です(2019年)。
当初は「王立美術館」として設立されましたが、1868年のスペイン9月革命時に「プラド美術館」の名称になりました。
攻略2:プラド美術館 必見の展示物
プラド美術館は、当初ティツィアーノ、ボス、ラファロ、ティントレット、デューラーなどイタリア・ルネサンスのコレクションが中心でした。
その後、スペイン芸術の黄金期を代表するベラスケス、ゴヤなど、スペイン王家の宮廷画家らの作品が加わりました。
現在のコレクションでハイライトになっているのは、やはりスペイン芸術の黄金期を代表するベラスケス、ゴヤや、エル・グレコなどスペインで活躍した画家の傑作です。
記事本文では、プラド美術館の必見作品40点を紹介しています。ここでは、絶対に見逃せない7点を厳選して紹介します。
① ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』:Room 012
ベラスケスは「画家の中の画家」と評されたスペイン最高の画家です。代表作はプラド美術館で一番有名な作品でもある『ラス・メニーナス』です。フェリペ4世の王女マルガリータや女官(ラス・メニーナス)を描いたいます。
② ディエゴ・ベラスケス『ブレダの開城』:Room 009A
『ラス・メニーナス』と並ぶベラスケスの代表作が『ブレダの開城』です。スペイン軍のスピノラ将軍が敬意を示しながら、敗者のブレダ市長から鍵を受け取るシーンを描いています。
③ フランシスコ・デ・ゴヤ『着衣のマハ』、『裸のマハ』:Room 036
ベラスケスと並ぶスペイン芸術黄金期の画家がゴヤです。スペイン王室の宮廷画家だったゴヤの傑作も多く展示されています。中でも必見なのは裸の女性を描くことがタブーだった時代に描かれた『裸のマハ』です。カモフラージュのため上から着衣を描いたのが『着衣のマハ』です。
④ エル・グレコ『羊飼いの礼拝』:Room 010B
ギリシア出身のエル・グレコはスペインで多くの作品を残しました。縦に長く伸びドラマチックに描かれた宗教画を多く残しています。
⑤ バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『無原罪の御宿り』:Room 016
ムリーリョもスペイン黄金期を代表する画家で、一時期はベラスケスより高く評価されていました。彼が多く描いた『無原罪の御宿り』が代表作です。
⑥ ピーテル・パウル・ルーベンス『三美神』:Room 029
フランドル派を代表するルーベンスですが、マドリードにも外交官として訪問しており、スペインの爵位も授かっています。
⑦ ヒエロニムス・ボス『悦楽の園』:Room 056
初期フランドル派の画家ヒエロニムス・ボスの代表作『悦楽の園』には、エデンの園、現世の快楽が、地獄が描かれています。
攻略3:プラド美術館の混みぐあい・おすすめ入場チケットは?
プラド美術館は、マドリード王宮と並んで一二を争う混雑スポットです。
以下のようにチケット売り場に行列ができ、30分以上並ぶこともよくあります。
事前にチケットをオンライン予約するか、共通パス「パセオ・デル・アルテ カード」(Paseo del Arte Card / Abono Paseo del Arte)を購入しておくと、チケット所有者用の入口から直接入場できて、行列を回避できます。
パセオ・デル・アルテ カードは、プラド美術館、ソフィア王妃芸術センター、ティッセン=ボルネミッサ美術館の3館に1回づつ入場できるミュージアムパスです。料金が30.4€と、3館入場料合計38€の2割引になります。
情報が少なかったので実際にパセオ・デル・アルテ カードをオンライン購入して利用してみました。3館ともチケット売り場をスキップして入場できたので、とてもお得で便利でした。
なお、混雑状況は、日程によって大きく変わります。下の写真のようにチケット窓口の列が短いこともあります。それでも、保険と思って事前予約しておくとマドリードでの時間を有効に使えます。
攻略4:プラド美術館の無料入場
プラド美術館は夕方から閉館時間までの2時間が入場無料になります。
月曜から土曜は18:00~20:00、日曜・祝日は17:00~19:00です。
無料の時間帯は、観光客が集中し入場待ちも長くなるので、正味の見学時間が2時間取れません(ギャラリーは閉館10分前にクローズ)。
そのため、混雑している中を駆け足で見て回ることになります。
傑作がたくさん展示される世界有数の美術館ですので、個人的には、入場料を払ってゆっくり鑑賞することをオススメします。
攻略5:プラド美術館での写真撮影は?
プラド美術館では写真撮影が禁止されています。記録に残せないのは残念ですが、その分、邪魔されずに鑑賞できます。
ちなみに、私が一番最初にプラド美術館を訪問した2006年は写真撮影が可能でした。その後、2007年頃から禁止されているようです。
紹介する絵画の写真のいくつかは2006年に自分で撮影したものです(そのため画質が悪い)。
攻略6:見学時間の目安
公式パンフレットに書かれている必見作品に絞って鑑賞しても優に2時間はかかります。普通に鑑賞するには3時間は必要です。
無料時間は2時間しかないので、十分に見て回ることが難しいです。
必見作品の中から10点くらいに絞り込めば、1時間で見てまわることも不可能ではありせんが、ちょっともったいないです。
プラド美術館の入場料・チケットの選び方
プラド美術館の入場料
入場料は以下の通りです。
チケット料金
通常チケット(GENERAL PRICE:18-64歳):15€
割引チケット(REDUCED PRICE:65歳-):7.5€
18歳未満、18-25歳の学生は無料です。
なお、公式サイトでチケットをオンライン予約する場合は、0.5€の手数料がかかります。
プラド美術館の入場無料の時間帯
攻略法で説明したとおり、以下の時間帯は入場が無料になります。
・日曜・祝日 17:00~19:00
チケット窓口で、無料チケットを発行してもらい入場します。
プラド美術館へお得に入場する「パセオ・デル・アルテ カード」
攻略法でも解説した「パセオ・デル・アルテ カード」(Paseo del Arte Card / Abono Paseo del Arte)は、マドリード三大美術館のプラド美術館、ソフィア王妃芸術センター、ティッセン=ボルネミッサ美術館に各1回、入場できるミュージアムパスです。
パセオ・デル・アルテ カードの価格は、3美術館の入場料合計38€を2割引した30.4€です。
入場料も安くなりますし、優先入場(チケット売り場スキップ)できるので、3つの美術館を見学する方には、とてもオススメのパスです。
カードは各美術館のチケット窓口、またはツアーサイトで購入できます。
ただし、プラド美術館の混雑しているチケット窓口で購入すると、優先入場のメリットが減ります。窓口購入の場合、一番空いているティッセン=ボルネミッサ美術館の窓口がオススメです。
私は、窓口に並ぶ時間を節約するためツアーサイトで利用当日に購入しました。電子チケットのバーコードをスマホで表示すれば、各美術館に入場できます。
パセオ・デル・アルテ カードはマイナーなのか、取り扱いサイトがTiqetsしかありません。
2€ほど手数料がかかったので、ティッセン=ボルネミッサ美術館の窓口で購入しても良かったかもしれません。
パセオ・デル・アルテ カードは下記ボタンから予約可能です。
安くチケットを予約できる日本語サイトは?
公式サイトの予約は英語になるので、日本語で安く予約できるサイトを調べてみました。以下が調査結果です。
調査結果:Tiqetsがわずか0.1€ですが公式サイトより安く販売しています。
ほぼ同じ価格ですので、英語の予約で問題ない方は公式サイトで、日本語で予約したい方は、わずかですが割安なTiqetsで予約されてはいかがでしょうか。
プラド美術館の開館時間・休館日
開館時間
・月曜-土曜 10:00 – 20:00
・日曜・祝日 10:00 – 19:00
※最終入館 閉館30分前
休館日
・1/1、5/1、12/25
営業時間の変更などもありますので、公式サイトの営業時間もチェックしてください。
営業時間(プラド美術館公式サイト)
プラド美術館の最寄駅・行き方
プラド美術館の地下鉄最寄り駅は、日本語で「芸術駅」の名前を持つ「エスタシオン・デル・アルテ」(Estación del Arte)です。駅から徒歩10分です。
この駅は、鉄道(Renfe)のアトーチャ駅のそばにあります。鉄道のアトーチャ駅からもプラド美術館まで歩けます。
エスタシオン・デル・アルテのプラットフォームには、ティッセン=ボルネミッサ美術館が所蔵するホルバインの『ヘンリー8世の肖像』のポスターがありました。
駅を出たらプラド美術館に通じるプラド通りをまっすぐ進みます。右側車線の歩道を進むとマドリード王立植物園の前を通ります。
途中、右手にベラスケスの銅像があるプラド美術館のベラスケスの入口が見えます。チケット売り場は建物北側にあるので、そのまま進みます。ここから100mちょっとです。
なお、地下鉄2号線を利用する場合は、北側にあるBanco de España駅からシベレス広場を通って徒歩10分です。
ソフィア王妃芸術センター(徒歩10分強)やティッセン=ボルネミッサ美術館(徒歩5分)から歩くこともできます。
プラド美術館の入場方法・当日チケットの買い方
プラド美術館の建物北側にチケット売り場があります。開場15分前9:45には、下の写真のように長い列ができていました。チケット売り場は開館時間より前にオープンしていました。パセオ・デル・アルテ カードや事前予約したチケットを持っている場合は、チケット売り場の先にある入場口へ進みます。
チケット売り場です。窓口が複数あり、写真手前の①、②窓口はグループチケット用の窓口でした。窓口の運用は変わる可能性があるので、手前にいる係員さんの誘導に従えば良いと思います。
チケットを当日購入した場合は、チケット売り場の脇にある階段を上がってゴヤの扉(入口)から入場します(今後、入場ルールが変わる可能性もあります)。
チケット所有者はチケット売り場の前を通過して、建物奥にあるヘロニモスの扉(入口)から入場します。
入口でチケットやパセオ・デル・アルテ カードを提示して入場します。スマホの画面にチケットのバーコードを表示して入場できました。チケット確認後、セキュリティチェックを受けます。
プラド美術館のマップ
プラド美術館は、0階(地上階)、1階、2階の3階建てです。
館内には、以下の美術館ガイドのパンフレットがおいてあります。
日本語に対応しており、フロアーマップと以下のような必見作品が掲載されているので、忘れずに取って置きましょう。
※クリックで拡大します
このように必見作品が表示されていて、ありがたいのですが、作品の一部しか表示されていないので、どの作品なのか迷うことがあります。
下記では、必見作品のなかからよりすぐった40点をフルサイズの写真付きで紹介しているので参考にしてください。
各フロアのマップは、以下の見どころの紹介で掲載します。
英語版ですがプラド美術館の公式サイトからPDFのマップもダウンロードできます。
プラド美術館のオーディオガイド
各入場口付近には、オーディオガイドをレンタルするカウンターがあります。マップ上のヘッドフォンのアイコンがクローク/ロッカーです。
日本語にも対応しており、料金は4€です。
プラド美術館のクローク
各入場口付近には、無料のクロークとロッカーがあります。マップ上のハンガーのアイコンがクローク/ロッカーです。
プラド美術館の見どころ・見学コース
入場口によって0階または1階から入場します。どのフロアから見ても良いですが、本記事では0階から順に、北エリアと南エリアに分けて見どころを紹介します。
同じ画家の作品は、基本的に近い場所に展示されていますが、ゴヤはフロアが分かれて展示されているので見落とさないように注意してください。
また、貸出中の作品や展示場所が変わる作品もあります。最新の展示場所は、プラド美術館の公式ページで確認できます(公式サイトURLを記事の最後に掲載しています)。
0階の必見作品
以下、北エリア(マップ左側)、南エリア(マップ右側)に分けて必見作品を紹介します。
見学中、ちょっと苦労したのが部屋番号がギリシア数字で書かれていたことです。簡単な対応表を掲載します。10の位の記号と、1の位と記号を組み合わせます。
2: II
3: III
4: IV
5: V
6: VI
7: VII
8: VIII
9: IX
10: X
11: XI
20: XX
30: XXX
40: XL
50: L
60: LX
70: LXX
80: LXXX
0階北エリア(左側)
このエリアには、ブリューゲル、デューラー、ボス、ラフェエロなどの傑作が展示されています。
ピーテル・ブリューゲル(父)『死の勝利』(1562 – 1563) :Room 055A
ブリューゲルはルネサンス期のフランドルの画家です。長男も同名で画家のため、ブリューゲル(父、老)とも呼ばれます。
14世紀に流行したペストは、中世の人々の死生観を大きく変えました。『死の勝利』は、逃れられない死を警告するために描かれたテーマです。
アルブレヒト・デューラー『自画像』(1498) :Room 055B
デューラーは、ドイツ出身のルネサンス期の画家です。イケメン画家としても有名です。
この自画像は、イタリアでルネサンス影響をたくさん受けたのち、ドイツのニュルンベルクに戻ってきたときに描かれました。
アルブレヒト・デューラー『アダム / イブ』(1507) :Room 055B
対で描かれた等身大のアダムとイブです。善悪の知識の実(俗説ではりんご)を食べて、罪を追う前の二人が描かれています。
デューラーが描いたアダムとイブは以降、理想のプロポーションとされました。
フラ・アンジェリコ『受胎告知』(1426) :Room 056B
フラ・アンジェリコは修道士で、初期ルネサンスを代表するイタリアの画家でもあります。フレンツェ、バチカンで多くの宗教画を残しました。
宗教画として人気のモチーフの受胎告知ですが、フラ・アンジェリコも多くの受胎告知を描きました。
アンドレア・マンテーニャ『聖母被昇天』(1462) :Room 056B
マンテーニャはルネサンス期・パドヴァ派を代表するイタリアの画家です。
当時は珍しかった遠近法を活用した画家として知られ、聖母マリアが亡くなる光景を描いた、この絵でも活用されています。
ヒエロニムス・ボス『悦楽の園』(1490 – 1500) :Room 056
『悦楽の園』は初期フランドル派の画家ヒエロニムス・ボスの代表作です。
3つのパネルに描かれた祭壇画で、左パネルにはエデンの園が、中央パネルには現世の快楽が、右パネルには地獄が描かれています。描かれた当時より、20世紀のシュルレアリスム運動の中で高い評価がなされた作品です。
フアン・デ・フランデス『磔刑』(1509 – 1519) :Room 057
フアン・デ・フランデスはスペインを中心に活躍した初期フランドル派の画家です。フランドルに生まれましたが、カスティーリャ女王イサベル1世の宮廷画家になりました。
この絵画は、パレンシア大聖堂の祭壇画として描かれました。
ファン・デル・ウェイデン『十字架降架』(1443以前) :Room 058
ファン・デル・ウェイデンは北方ルネサンスと呼ばれる初期フランドル派を代表する画家です。
十字架から降ろされるキリストの遺体を描いた、この作品は、宗教画の模範とされ、多くの画家に模写された傑作です。
ラファエロ・サンティ『枢機卿』(1510 – 1511) :Room 049
ラファエロは、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並らぶ盛期ルネサンス三大巨匠の一人です。
この枢機卿のモデルは特定されていません。可能性が高い候補として、ベンディネロ・スアルディ枢機卿とジョバンニ・アリドシ枢機卿が挙げられています。
ラファエロ・サンティ『シチリアの苦悶』(1515 – 1516) :Room 049
十字架を背負ってゴルゴダの丘へ向かうキリストが描かれていますが、シチリア島のパレルモにあるサンタ・マリア・デッロ・スパジモ修道院のために描かれたので『シチリアの苦悶』と呼ばれています。
盛期ルネサンスの代表とされるラファエロですが、この絵はバロック様式に近いとされています。
0階南エリア(右側)
このエリアでは、ゴヤの傑作が見逃せません。
フランシスコ・デ・ゴヤ『マドリード、1808年5月3日』(1814) :Room 064
ゴヤは、ベラスケスと並んでスペインを代表する画家です。若い頃は泣かず飛ばずでしたが、40代になってカルロス4世の宮廷画家になりました。
1808年、ナポレオン配下のミュラ将軍によってマドリードは侵略を受けます。市民が蜂起しますが、フランス軍によって鎮圧されてしまい、数百名が銃殺されました。その様子を描いた絵画です。
フランシスコ・デ・ゴヤ『我が子を食らうサトゥルヌス』(1820 – 1823) :Room 067
『我が子を食らうサトゥルヌス』は、ゴヤが描いた「黒い家」と呼ばれる連作の一点です。「ろう者の家」と呼ばれたゴヤの別荘に14点の作品が飾られていました。
ローマ神話の神サトゥルヌスが、自分の子供に殺されるという予言を信じて、子供を食べてしまうシーンが描かれています。サトゥルヌスは英語で「サターン」、つまり土星の守護神です。
パシテレスの弟子『オレステスとピュラデス』(B.C. 1st) :Room 071
1623年にローマで発見された紀元前1世紀の彫刻です。
ギリシア神話の英雄オレステスと固い友情で結ばれたピュラデスが彫られています。
1階の必見作品
1階北エリア(左側)
このエリアでは、なんと言ってもベラスケスの作品が必見です。その他、エル・グレコ、ティツィアーノ、ルーベンスなど傑作が多いエリアです。
エル・グレコ『胸に手を置く騎士の肖像』(1580) :Room 008B
『胸に手を置く騎士の肖像』はエル・グレコの初期の作品の一つです。プラド美術館の初期の段階から展示されていたので、エル・グレゴの代表作の一つになっています。
描かれた騎士が誰だかはわかっていませんが、首周りには白いひだの飾りなど16世紀後半の典型的なスペインのファッションに見を包んでいます。
エル・グレコ『三位一体』(1577) :Room 008B
エル・グレコがトレドで受託した絵画の一つです。エル・グレコはスペインに滞在する前はイタリアで活動していました。そのため、イエスの肉体の描写はミケランジェロの影響を受けています。
エル・グレコ『受胎告知』(1597 – 1600) :Room 009B
エル・グレコが連作で描いた受胎告知の一点です。大天使ガブリエルが聖母マリアにキリストの受胎を告げるシーンが描かれています。中心に描かれた鳩は、精霊を表しています。
マドリードの神学校の祭壇に飾るために描かれた作品です。
エル・グレコ『聖霊降臨』(1600) :Room 009B
こちらも神学校の祭壇に飾るために描かれた作品と言われています。
エルサレムで聖霊降臨祭の日に、マリアと使徒の頭上に炎として精霊が注がれたシーンが描かれています。次のイエスの復活と対になる作品です。
エル・グレコ『イエスの復活』(1597 – 1600) :Room 009B
復活したキリストを描いています。キリストが手に持っている白い旗は、死に対する勝利を象徴しています。
エル・グレコ『羊飼いの礼拝』(1612 – 1614) :Room 010B
『羊飼いの礼拝』はエル・グレコ最晩年の作品です。トレドのサント・ドミンゴ・エル・アンティグオ修道院に飾られるために描かれました。
ホセ・デ・リベーラ『ヤコブの夢』(1639) :Room 009
リベーラは、スペイン出身のバロック期の画家です。主にイタリアのナポリで活動しました。
ヤコブの夢にあらわれた神が、カナンの地を与える場面を描いています。
ホセ・デ・リベーラ『砂漠のマグダラのマリア』(1641) :Room 009
悔い改めて聖女になったマグダラのマリアを描いています。描かれている香油の瓶の油をキリストの足に塗り、自らの髪で拭き取りました。
ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』(1656) :Room 012
ベラスケスは、マネが「画家の中の画家」と評したバロック期のスペインを代表する画家です。
宮廷画家だったベラスケスの作品数は少なく、現存する120点のうち1/3はプラド美術館に所蔵されています。
この作品は、フェリペ4世の王女マルガリータを中心に女官たち(ラス・メニーナス)を描いた絵画です。左側に描かれいる画家がベラスケス自身です。奥にある鏡に写っているのが、フェリペ4世夫妻です。つまり、王女やベラスケスは国王を見ている構図です。
ディエゴ・ベラスケス『ブレダの開城』(1635) :Room 009A
『ブレダの開城』は、『ラス・メニーナス』と並ぶベラスケスの代表作です。
1625年にスペイン軍がオランダの都市ブレダを陥落させました。その勝利を記念して描かれた戦勝画で、ブエン・レティーロ宮に飾られていました。
スペイン軍のスピノラ将軍が、降伏のあかしとしてブレダ市長から鍵を受け取るシーンを描いています。勝者であるスピノラ将軍が敗者であるオランダ軍に対して敬意を示したことがわかります。
ディエゴ・ベラスケス『バッカスの勝利』(1628 – 1629) :Room 010
酒の神バッカスが農民との酒飲み勝負に勝利したシーンを描いています。
ベラスケスはスペイン絵画の黄金時代の代表的な画家と言われています。芸術=宗教だったこの時代に、王の庇護下にあったとは言え、市井の人々と神を同列に生き生きと描いた点が黄金時代を築いたとも言えます。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『ダビデとゴリアテの首』(1600) :Room 006
カラヴァッジョはバロック期を代表する画家です。
カラヴァッジョは、聖書に登場するダビデと巨人ゴリアテをテーマに何枚か描いています。
ピーテル・パウル・ルーベンス『アダムとイブ』(1628 – 1629) / ティツィアーノ『アダムとイブ』(1550) :Room 025
ルーベンスは絵画の勉強をするため、イタリアのヴェネツィアなどを訪れており、そのときに見たティツィアーノの影響を受けています。
ティツィアーノが描いた『アダムとイヴ』を模写しており、プラド美術館ではティツィアーノが描いた元の『アダムとイヴ』と並んで展示してあります。どちらがルーベンスの作がおわかりでしょうか(正解:右がルーベンス)。
ティントレット『弟子の足を洗うキリスト』(1548 – 1549) :Room 025
ティントレットはルネサンス期のヴェネツィア派の画家で、ティツィアーノの門下で修行をしました。
キリストが弟子の使徒ペテロの足を洗い、謙遜と他人への奉仕の例を示している場面です。プラド美術館に飾られるまでは、フェリペ4世がエル・エスコリアル修道院に掲げていました。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『ミュールベルクのカール5世』(1548) :Room 027
ティツィアーノは、ルネサンス期のヴェネツィア派で最も重要な画家の一人です。
この絵は、神聖ローマ皇帝カール5世がミュールベルクの戦い(1947年)に勝利したことを記念して描かれました。ヴァン・ダイクが、この絵をお手本に「チャールズ1世の騎馬像」(ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵)を描きました。
1階南エリア(右側)
このエリアも、ベラスケス、ゴヤ、ムリーリョなどスペイン絵画黄金時代の傑作ぞろいです。
ディエゴ・ベラスケス『バリェーカスの少年』(1635 – 1645) :Room 015
ベラスケスは、宮廷に使えていた道化師を描きました。この絵のモデルは、皇太子の遊び相手だったフランシスコ・レスカーノです。
ディエゴ・ベラスケス『セバスチャン・デ・モラ』(1644) :Room 015
道化師「セバスチャン・デ・モラ」と伝えられていた絵画ですが、近年、フェリペ4世に付き従ってアラゴンへ行ったエルプリモだと判明しました。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『無原罪の御宿り』(1660 – 1665) :Room 016
ムリーリョはバロック期を代表するスペインの画家です。
『無原罪の御宿り』を題材に何枚もの作品を残しました。彼は聖母マリアを庶民的で可愛らしく描きました。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ『無原罪の御宿り』(1767 – 1769) :Room 019
ティエポロは、バロック期のイタリア人画家です。18世紀のヴェネツィアを代表する画家です。
アランフェスにあるサンパスクアル王立修道院のために描かれた7枚の祭壇画の1枚です。
クラウディオ・コエーリョ『聖アウグスティヌスの勝利』(1664) :Room 018A
コエーリョは、バロック期のスペイン・マドリード派を代表する画家です。カルロス2世の宮廷画家を務めました。
北アフリカ出身の聖人アウグスティヌスが異教徒や地獄に勝利する様子が描かれています。
ピーテル・パウル・ルーベンス『三美神』(1630 – 1635) :Room 029
ルーベンスは、フランドル・バロックを代表する画家です。マドリードにも外交官として訪問しており、フェリペ4世からスペインの爵位も授かっています。
『三美神』はルーベンス晩年の作品で、ふくよかで透き通るような肌を持つ女神達が特徴的です。
フランシスコ・デ・ゴヤ『着衣のマハ』(1800 – 1807) / 『裸のマハ』(1795 – 1800) :Room 036
宮廷画家となり順風満帆のゴヤでしたが不治の病におかされ、聴力を失ってしまいます。
聴力を失った後、描かれたのが代表作『着衣のマハ』、『裸のマハ』です。
当時は裸の女性を描くことが禁じられていたので、『着衣のマハ』は『裸のマハ』のカモフラージュとして描かれたと言われています。誰の依頼で描いたのか、裁判所で尋問されたゴヤですが、最後まで秘密のままにしました。最終的には、当時、首相だったドゴイの家で発見されました。
「マハ」はモデルの名前でなく、マドリード娘という意味です。モデルに関しては、アルバ公爵夫人もしくはゴヤの愛人ではないかと言われています。
フランシスコ・デ・ゴヤ『カルロス4世の家族』(1800) :Room 032
ゴヤが宮廷画家として、カルロス4世の家族を描いた絵画です。
真ん中の王妃マリア・ルイサを目立たせるように描かれています。王子フランシスコ・デ・パウラを挟んで立つのが、カルロス4世です。左端にぼんやりと描かれているのがゴヤ本人です。ベラスケスの『ラス・メニーナス』の影響を受けていることがわかります。
2階の必見作品
左側エリアは、レンブラント、ルーベンスなどのフランドル絵画、右側エリアは、ゴヤなどスペイン絵画が展示されています。
2階は北と南に分かれていて、行き来ができません。1階から、ぞれぞれ移動してください。
レンブラント・ファン・レイン『ホロフェルネスの宴会のユディト(アルテミシア)』(1634) :Room 076
レンブラントはネーデルランド出身のバロック期を代表する画家で、「光の魔術師」の異名を持ちます。
長い間、この絵は、夫マウソロスの遺灰を受け取るアルテミシア、もしくは、毒盃をあおるソフォニスバと言われてきました。現在は、宴会でホロフェルネスの首をはねるユディトとされています。女性のモデルはレンブラント妻サスキアだとされています。
以上、各フロアの見どころを紹介しました。
プラド周辺の観光スポット
マドリード三大美術館に数えられるソフィア王妃芸術センター、ティッセン=ボルネミッサ美術館が徒歩圏内にあり、はしごして鑑賞できます。私は、午前中、セゴビアを観光した後、午後、マドリードに戻ってプラド美術館とソフィア王妃芸術センターをはしごしたので、疲労困憊でした。
他にも以下の人気観光スポットがあります。
プラド美術館のすぐとなりにあるのが、サン ヘロニモ エル レアル教会です。16世紀初頭に建設されたローマ・カソリックの教会です。イベリア・ゴシック様式で建設された貴重な建物です。教会の一部は、プラド美術館として利用されています。
サン ヘロニモ エル レアル教会から東の100mほどのところに、マドリード市民の憩いの場「レティーロ公園」があります。広大な敷地の公園内では、たくさんのマドリード市民がくつろいでいました。
参考)プラド美術館の公式サイト
以上、「プラド美術館」のお得なチケット、見逃せない作品、混み具合、入場の流れ、見学コースなどを詳しくご紹介しました。
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